北大病院にて/ただのみきや
が楽しいようで
何やら読んでいる老人の
前でその顔を下から覗き込む
にこりともしない老人が
にこりともしないで微笑んでいる
そういう不器用な男は何処にでもいる
子どもを見る目が恐そうで優しい
わたしの方へは来ないが良い
純粋なものは痛い
酒も砂糖も
薬もそうだ
純粋すぎるものは身体に毒だ
置き忘れた父性
隠された幼児性のミイラ
埋められない喪失感
粉っぽい善意
甘ったるい偽善
あらゆる扉が半開きになり
涎みたいに
田螺みたいに
はみ出してしまう
奇妙な哀愁
いい匂いではない
精神の加齢臭だ
目はいつまでも
屈託のないものを
憑かれたみたい
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