喫茶店/ヒヤシンス
 
 ランプスポットに明かりが灯る頃、
 私は常連客に珈琲を淹れていた。
 柔らかな音楽が流れ、
 店内は優しい暖色に包まれていた。

 お客の一人は英字新聞を何かに切り張りしていた。
 他の一人は私を睨むと煙草を吸いながら唾を吐いた。
 マスターはレジ横の椅子でうたた寝をしていた。
 私はただ自分で淹れた珈琲を飲んでいた。

 一人の男が店内に入ってきた。
 足はふらつき、目は変に据わっていた。
 次の瞬間、男はいきなりわめき散らした。
 切り張り男は驚いて目を見張った。
 唾吐き男は再び唾を吐いた。
 マスターは薄目を開けた。
 私はただ珈琲を淹れていた。

 
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