喫茶店/ヒヤシンス
 

 散々わめくとその男はよろよろしながら店を出て行った。
 切り張り男は再び夢中になって切り張り始めた。
 唾吐き男は相変わらず唾を吐きながら会計を済ませ出て行った。
 マスターは無愛想に金を受け取ると再びうたた寝をした。
 私は自分で淹れた珈琲をまた飲んだ。

 午前三時、切り張り男は満足げに店を出て行った。
 変な常連客を見送ったマスターは煙草を吸いながらレジで金を数えていた。
 私は自分とマスターの珈琲を淹れた。
 私はお金が無かったので、仕方なく安い煙草を吸った。
 
 店にはいつしか古いジャズが流れていた。
 暖色に包まれた店内で、マスターと二人、珈琲を飲み、煙草を吸った。
 真夜中に営業している喫茶店の話。
 ただそれだけである。
戻る   Point(6)