沈丁花3/吉岡ペペロ
 
へんから、分かりませんわ」
 青山くんが小学生のころ、お母さんは離婚していなくなったらしかった。
 繁治はこの青年を励ましたくなった。若いからこれからいろいろあると思うけど個人タクシーを目指せよだとか、そんなこと俺に言われるまでもないかとか。でも繁治は言わなかった。なぜだか裕子ちゃんが泣いていたのが思い出された。青山くんは自分より立派だ。未来がある。 俺が言えることなんかないよな。繁治がかける言葉をつまらせていると、
「あれ沈丁花ですよね。ダッシュボードにあった花びら、シゲさん、お花摘んだんでしょ、笑けますやん」
「あ、ごめん、残ってた?」
「ぼくもあの花好きなんですよ」
「そうか」
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