沈丁花3/吉岡ペペロ
 
 派出所のまえを通ると自分が逮捕されることを想像した。きょういまからする仕事がさいごになるのかも知れない。それがほんとうのことなんだから。
 会社に着くとペアの青山くんが一生懸命洗車している姿が見えた。彼は若いのにいつも職人のように丁寧に洗車してくれる。外も中も完璧だ。綺麗に洗車してくれたお礼と引き継ぎがてら、繁治は青山くんにコーヒーをおごってすこし雑談をした。
「ぼくのおふくろ、こいつのファンやったんですよ」
 青山くんがスポーツ新聞をひろげて、覚醒剤で捕まった元プロ野球選手の顔写真を指でたたいた。
「それなら、お母さんショック受けてただろう?」
「どうなんやろ、もう10年も会うてへん
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