沈丁花3/吉岡ペペロ
ピックアップした義兄を山におろした。義兄がトランクから寝袋にいれた姉を出してそれを担いだ。繁治もトランクから大きなカボチャを出し後部座席にのせた。町に降りてから繁治は河原にカボチャを捨てた。その間ずっと、姉ちゃん、ありがとう、姉ちゃん、ありがとう、そう唱えていた。翌日、山で義兄を拾い自宅に送り届けた。義兄が車に乗り込んできたとき、ベーコンのような匂いがした。繁治は、義兄があの日姉をどうしたのかを聞いたことがない。姉を久しぶりに見たのは、いまのアパートに引っ越した日だった。姉は黒光りした古木のようだった。その日からまた繁治は、こころのなかの姉と平穏な暮らしをはじめることができるようになった。
派
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