沈丁花3/吉岡ペペロ
 
が見えたのだ。思わずガラスに顔を近づけて凝視しているとなかから女が出てきて、
「よかったらご覧になられてください」そう言って繁治を店内に招きいれた。
 店はちいさな美術館のようだった。場所を借りて作品を展示させてもらっているのだという。
 繁治が見た動物の足腰のミイラは錯覚だった。ニスを塗って固めたセーターやマフラーを組み合わせて、そのひとつひとつを天井から吊るしていたのだった。芸術ってこういうことなんだろうか。
「動物のミイラかと思いましたよ」
 繁治がほっとしながら女に言うと、
「そんな感想はじめてです。嬉しいです」本心かどうかは分からないが作者でもある女は喜んだ。
 店を出て繁
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