沈丁花2/吉岡ペペロ
も六十をまえに死んだ。だから繁治にとって姉は母のようであったのかも知れない。義兄は父のような存在なのかも知れない。
義兄が早い夕食をつくってくれている音でいつも目を覚ます繁治だったが、きょうは違った。
「ありえない、ありえないから、そんなの、警察呼ぶよ、いったいお母さんどこ行っちゃったの?」
繁治は天井を見つめながらため息を吐いた。胸がどんよりと焦げていった。
繁治は布団をたたみ、押し入れをあけた。鼻から息を吸ってみた。なにかの花のような香りがする。
部屋をでると裕子ちゃんが台所にたつ義兄に詰め寄っていた。それから繁治をきっとにらんで、
「お母さんどこ? ありえないから、旅行に
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