沈丁花2/吉岡ペペロ
 
ていた。姉が好んでカラオケでも普段でもよく口ずさんでいた曲だ。姉の口臭のような匂いを感じながらいつも繁治は眠りにつく。
 姉がいたころよく義兄と三人でカラオケにいった。歌うことが肺をつよくするからというのが最初の理由だった。しょっちゅう義兄のつくってくれる朝食と姉のつくってくれる夕食をふたりの家で食べさせてもらっていたから、カラオケ代はいつも繁治がだした。
 繁治には離婚歴があった。子どももいなかったしお金もなかったから、もめるような離婚ではなかった。しかし繁治の生活は、数ヶ月で煙草とごみと借金に埋もれていった。会社をやめ、なけなしの貯金を食いつぶし、賭け麻雀にはまりこんでいった。役に鳩がはい
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