沈丁花2/吉岡ペペロ
 
になんだか懐かしくなる。
 冷蔵庫にビールを取りにいった。それからさっき日だまりのあったほうを見やった。まだ揺れている。繁治は口をすぼめて長い息をつよく吐いた。うん、いい朝だ、こころのなかでそうつぶやいた。
 トーストの香りが鼻をくすぐった。この匂いを嗅ぐと繁治はいよいよ眠たくなる。義兄が目玉焼きをつくっている。義兄はそれを、ちぎったトーストをまぜたサラダのうえにのっける。あとはお好みに応じてドレッシングをかける。目玉焼きの裏がカリカリだ。白身が白くなったらフライパンに熱湯を少量そそいで蒸すのがコツらしい。
「水だとフライパンが冷えちゃうんだよ」
 義兄はいまではもうそんなうんちくを言わな
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