沈丁花/吉岡ペペロ
 
、いい香りはどうやら紫いろの蕾の粒がひらいてできたちいさな白い花から発せられているようだった。
 昔から知っている匂いだ。けれど繁治ははじめてその香りと花を一致させたのだった。
 繁治はその花をひとつかみ取った。そして車に戻りダッシュボードにぱらぱらとまいた。
 岡村隆史が低い声でだらだらと話している。静かな雰囲気が好きで普段はラジオ深夜便しか聴かない繁治だったが、岡村隆史の日だけはオールナイトを聴いた。ファンという訳ではないけれど、彼がテレビに出ているのを見ているといつもなぜか恥ずかしいような気持ちになった。ひとりごとを誰かに聞かれているような気恥ずかしさだった。
 ダッシュボードのちい
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