ファントムペイン/ただのみきや
 
を残す人
人には見せたくない写真のように
こころを隠棲させて
その二つの奥深い瑪瑙 円い鏡を
あれこれ楽し気に世界は滑って往くが
壊れたスイッチ
扉を開けることもなく
内窓から冬枯れの庭を眺めては
花盛りの面持ちを辿ってばかり


鮮やかな記憶の記憶そして
その記憶の記憶
複写され続け劣化した
印象だけが輪郭もなく
忘却の砂丘へ沈んで往く
雲の向こうの月のように
汚れ果て擦り切れたぬいぐるみの
感触だけが手放せない


そうして忘れ果てたころ
夢の中でばったりと
全くの偶然のように出会うのだが
伝えることも繋ぎ止めることも出来ず
エスカレーターみた
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