生きようと思うのだ/ただのみきや
 
中にしかない
張りぼての現実
知りすぎた
それを知る前に
それについて知りすぎた
顔を寄せれば寄せるほど
細部は曖昧
雑な理屈のお喋りが
落ち葉みたいに死体を隠す
獲物の皮を剥ぐように
わたしはわたしを剥がされる
顔のない素体の
塞がれた叫びと亀裂


甘いシロップで一杯にされた
陶器のように滑らかな肌
ひとつの欠けもなく世間様を映す
だが情の緒に縛られまた弛められる正体は軟体
嵐に翻弄される洗濯物のように
本音と嘘を分ける遠心分離の間もなく
殻の中からこの世界へと
溶けるように 
浸み出てしまう
《魂ノ失禁 見ナイデ見ナイデ! 》
あたりを水浸し
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