混沌のクマ/オダカズヒコ
と思ったが
それらの事は
ぼくには全く関係のないことだと思った
ぼくには全く関係ない者たちへと落ちた
何かの
いかづちだと思ったのだ
満員電車の中では
誰もが
運ばれる意識を抱え
そのために無口であるか
饒舌であっても
雑談しかなかった
人生を見つめるには
あまりにも危険な空間だと
誰も憔悴しきった方式で
あのぜんまいの様に剣呑を抱えこんでいるのだ
今にも吐き出しそうな苦痛を
それが都会の民だと
ぼくは薄々感じ始めていたのだ
また春になって
冬眠からはい出したぼくは
十分な大人のクマになっていた
人間でいえば
25歳くらいだろう
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