カッティング・エッジ/ホロウ・シカエルボク
わたしは少し感覚が古い人間なのかもしれない、きちんと鍵を確かめてホテルのような廊下をエレベーターまで歩く…数年前にこんなふうに管理人室へ出向いている途中で、これから屋上へと飛び降りに行く人間とすれ違ったことがある、あれは確か三階に住む家族の長女だった…わたしが乗ろうと待っていたエレベーターから降りてきたのだ、「どうしたの?」とわたしは聞いた、「ちょっと眺めのいい景色が見たくなって」と彼女は答えた、管理人室への用事が終わって降りてくるエレベーターに乗り込もうと待っていたら、巨大な土嚢が落ちたような音がしてロビーの方を見やると、ちょうど正面玄関のあたりにさっきの女の子が倒れていたのだ、上半身が真赤にな
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