殺されるひととすれ違う(2/2)/吉岡ペペロ
いつも裸でやるようになっていた。
真帆ちゃんの温度のうえで、もう顔も合わせずに、声だけになった質問に、真帆ちゃんの肌に喋りかけるように答えていた。本来のじぶんになれているような気がした。自信とはちがう、もっと空気みたいな、本来のじぶん。本来のじぶんってなんやろか。
授業が始まるまえ、美智があたしのまえを素通りした。あたしは美智を殺してなんかいない。殺されているのはあたしのほうだ。美智を見かけるたびあたしは幽霊にでもなってしまったかのような気持ちになる。美智もそうなんやろか。美智に駆け寄っていって、理由をちゃんと聞いて、謝ろうともしないあたしは、やっぱり美智を殺してしまったんやろか。
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