田村隆一(その詩行のかっこよさから語る)/岡部淳太郎
そういうわけにはいかない」と言う。
(粟津則雄「内面性と世界 ―田村隆一再論」)}
つまり、僕がしびれたあのかっこよさは「一種の密室」的なかっこよさだったのだ。この後、詩人はこうした傾向を更に推し進め、日常にユーモアと皮肉を盛り込んだ詩を多く書きついでゆくことになる。
田村隆一は実生活では酒をこよなく愛したらしい。今年(二〇〇五年)初頭に思潮社から刊行された詩の森文庫の中の田村隆一のエッセイ集「自伝からはじまる70章」は、副題に「大切なことはすべて酒場から学んだ」とある。詩人がこの世を去ってから既に六年半もの歳月が流れているが、酒好きだったことと、残された肖像写真などから想像する
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