田村隆一(その詩行のかっこよさから語る)/岡部淳太郎
 
思想」「死語」「水半球」「5分前」「陽気な世紀末」「奴隷の歓び」「毒杯」「灰色のノート」等々。タイトルだけで読む気を起こさせるのも一種の才能であろうか。そういえば「腐敗性物質」というこれまたかっこいいタイトルの詩もある。


魂は形式
魂が形式ならば
蒼ざめてふるえているものはなにか
地にかがみ耳をおおい
眼をとじてふるえているものはなにか
われら「時」のなかにいて
時間から遁れられない物質
われら変質者のごとく
都市のあらゆる窓から侵入して
しかも窓の外にたたずむもの

(「腐敗性物質」冒頭)


 この八十行を越える長詩はこう結ばれる。


{引用
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