田村隆一(その詩行のかっこよさから語る)/岡部淳太郎
く、ただひたすらかっこいい言葉の集合体として田村の詩を享受していた。
詩集「四千の日と夜」における言葉のかっこよさは圧倒的である。同詩集から散文詩を一篇引く。
ドイツの腐刻画でみた或る風景が いま彼の眼前にある
それは黄昏から夜に入ってゆく古代都市の俯瞰図のようでも
あり あるいは深夜から未明に導かれてゆく近代の懸崖を模
した写実画のごとくにも思われた
この男 つまり私が語りはじめた男は 若年にして父を殺
した その秋 母親は美しく発狂した
(「腐刻画」)
はっきりいって、この詩に意味があるのか僕にはわからないし、たとえ意味があったとしても、
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