田村隆一(その詩行のかっこよさから語る)/岡部淳太郎
 
は叫びのためにあり 叫びは窓からしか聴えてこない

どうしてそうなのかわたしには分らない
ただどうしてそうなのかをわたしは感じる

小鳥が墜ちてくるからには高さがあるわけだ 閉されたものがあるわけだ
叫びが聴えてくるからには

野の中に小鳥の屍骸があるように わたしの頭のなかは死でいっぱいだ
わたしの頭のなかに死があるように 世界中の窓という窓には誰もいない

(「幻を見る人」)}

 田村隆一の第一詩集「四千の日と夜」冒頭の一篇である。個人的なことだが、中公文庫の「日本の詩歌27 現代詩集」にこの詩が収録されていて、そこで僕は田村隆一という詩人を発見した。いまその奥付を
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