田村隆一(その詩行のかっこよさから語る)/岡部淳太郎
田村隆一は太平洋戦争後の荒廃した社会を的確な詩語で捉え、戦後詩壇を代表する存在になった。と、日本の詩の歴史ではそういうことになっているらしい。僕は言うまでもなく戦後生まれ、それも高度経済成長の真っ只中の時期に生まれているので、こうした知識は単なる後づけに過ぎない。二十一世紀の現在、田村隆一の詩を読んで感じるのは、その圧倒的なかっこよさだ。
{引用=空から小鳥が墜ちてくる
誰もいない所で射殺された一羽の小鳥のために
野はある
窓から叫びが聴えてくる
誰もいない部屋で射殺されたひとつの叫びのために
世界はある
空は小鳥のためにあり 小鳥は空からしか墜ちてこない
窓は叫
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