花びらなら土に帰す/アラガイs
せるのだ。
それもそのはずで、3DKとはいえ一日のほとんどをこの狭く仕切った部屋から出ようとはしないようだ。たまに外出するのは小学校へ自転車で子供を迎えに行く午後の三時から四時くらいまでで、そのときに夕食もついでに買っているのだろう、にぎやかなテレビの音だけが薄い窓の奥から消えることもない。
よく学校から帰ってきた女の子のけたたましい笑い声が聞こえてくる。そんなときは決まって時間どおりにオヤジが仕事から戻ってきたときだ。この四十半ばを過ぎたバッタのような尖った顔の持ち主はときに嫌な匂いを発散させる。
女は昼間めったに掃除機の騒音をさせることもないし、夜ボイラーが沸き上がる音も部屋からはしな
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