ミサ/ホロウ・シカエルボク
 
ら、彼女が二度と出られない穴の中に飲み込まれていっていることなど誰にも判らなかった、彼女の存在に関心を持っていた人間は腐るほども居たというのに―それでも彼女は、ミサは、もう狂気も正気もどうでもよかった、自分が正しかったのか間違っていたのかなんていうことも―だってもう自分は終わってしまった人間なのだから、そうしたことのいっさいを乗り越えることが出来なかった弱い人間なのだから―もう満足に動かすことも出来なくなった身体でどんなことを修正出来る?もうどうでもいいのだ―ゆがみ、汚れた廃車のフロントガラス越しでも冬の美しい夜空を見ることが出来た、凍えたってあとちょっとだ、痛みも、苦しさも、もうあんまり感じない
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