ミサ/ホロウ・シカエルボク
 





凍りついた脳髄は断片的な記憶ばかりを吐き出し、当然の如くそれは順序通りなどである筈も無く、たとえ拾い上げて並べてみたところで穴ぼこだらけで見られたものじゃない―古い舗装道路は山の麓で行き止まり、舗装の途切れるそのあたりで打ち捨てられた廃車がひとつ、その中で死にかけたまま生き延びてしまっている女―その女の状態は酷いものだった、手足の末端は凍傷にかかって萎びた野菜のように黒く弛んでしまっていて、そこに続く皮膚もモザイクタイルのように様々な色に変化している、もうたとえ本人に動く意志があったとしてもなにひとつ動かすことは出来ないだろう―四肢はそんなふうだったが、冬物の衣服によって幾重に
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