歩く耳/あおい満月
ような文章が、
増税反対と唾を吐いている。
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玉葱は知らない。
自分のために泣く人間の姿など。
けれど玉葱は、
切られたくて堪らない。
自分の身体から滴る汗が
世界を救うことだけは感じるから。
けれど、何故人間は自分のために
泣くのだろうか。
誰かの手をすり抜けて、
玉葱は考えてみる。
やはり、このきつい体臭のせいなのか。
ああああ、こんな皮さっさと脱いで、
トマトのような赤い瑞々しいドレスを纏いたい。
***
肉を捏ねる手が、
捏ねるごとに感情を増して、
爪が鋭くなっていく。
卵とパン粉を混ぜる。
卵のぬめりとパン粉のがさつきが、
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