ガ/ホロウ・シカエルボク
 


それからずいぶん長い時間が過ぎて
その場所は突然大人しくなった
あたりを歩く連中の顔が穏やかになり
強い光も、熱も、感じることはなくなった
昨日までが嘘のように和らいだのを見ていると
突然かれは以前に暮らしていたあの天井に戻りたいと思った
どうすれば戻れるのか判らなかったが
ここにきたときと同じように高く昇ればいいのではないかと思った
かれは静かになったそこを離れ
空を高く昇っていった


かれが懐かしい天井へと帰ってきたのはそれからうんざりするほどの時間が過ぎたあとだった、以前のように隙間から入り込もうとしたが、入れるような隙間はどこにも開いていなかった、かれは中を
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