暗転の種類/ホロウ・シカエルボク
 
フォー・ビートの暗幕だ、雨のにおいはじきにしなくなり、靴音の反響は古いビルの壁面を駆け上っていく、それはまるで俺から離脱した俺の魂の欠片、俺の魂の亡霊―俺の魂の欠片が浄化するのを俺は見上げている、ようやく、夜の面持ちを取り戻した、フォー・ビートの頭上を…ああ、そして、雨の肉片、ガラス窓に、自転車の篭に、社屋ビルの花壇に、捨てられた週刊誌に、残った雨の肉片、雨のにおい…止んでしまえば嘘のような…夜の街角は、夜の路上は、たったひとりを見つめるためだけにあり、たったひとりの死を、たったひとりの生を、たったひとりきりのためにある色味を、ひとつ残らず知るためだけに―風は震え上がるほどに寒く、星は真正面から見
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