暗転の種類/ホロウ・シカエルボク
 
はもうずっと無味乾燥な流行歌ばかりで、まるで紗幕のこちら側に居ても輪郭を掴みきれない古い亡霊のようだ、ほんの僅かの間雨が降って―上がり、電源に繋がれた冷蔵庫内のようにあたりは一気に冷え始める、呆然と立ちすくんだまま樹氷になる幻想を頭の隅に見ながら、帰路はいつでも保証なんかしてはくれない、代わり映えのしないものはいつでも新しいページを捲ろうとする腕を引っ張るものだ、それは知る必要がない、覚える必要などないと…ほんの数ページのお題目だけで、誰もが生きていけるんだって―そんな余計なものをすり抜けて、初めてきちんとした夜のように変貌した空は、スタン・ゲッツのサックスのように穏やかに居住いを整えていた、フォ
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