師走の皺/もり
 
リーマンの中年男、寝癖のついた若い男、ニットを被りアクセサリーをジャラジャラと身につけた男が、動物園の山羊のように青い草をゆったりとしたしぐさで探す。虎柄のセーターを着た受付の男はエコーに火をつけたまま、電話の音に機敏に反応し喫煙所を飛び出していく。
おれはマジックミラー越しに女を物色した。まだ罪悪感が抜けない。女は世界だ。こうしていると世界の眼中におれはいない。
あちらこちらでトーク終了を告げるキッチンタイマーのピピピピ・・が鳴り響く。ミヤと名乗るコンビニ店員の女からは金のにおいがプンプンした。おれたちは外へ出た。彼女は道に迷うことがなかった。
「クリスマスってばチキンがよく売れて忙しいよ
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