(1/3)伊勢うどんをマフラーに/吉岡ペペロ
 
た。稼ぎだってあの人とそう変わらない。これからどれだけお金がかかるのか不安じゃないの、それならあなたがやめたらいいじゃない、そんな一触即発のあたしたちの空気に母も困憊し始めたとき、あの人から離婚の話が出た。
 あの人とあたしとアーヤはあたしたちが昔いきつけにしていた飲食店で月に一度会う。いろんな飲食店にいくのだが、お店のひとはあたしたちが離婚していることを多分知らない。アーヤに障害があることも多分分かっていない。
 ところがあの日あの人はタイ料理の店であたしたちの前で泣いた。
「なんでこんなことになったのか、かわいそうなことをしてごめんな。俺はただ、毎日俺だけがソファーで寝るのが嫌だっただけ
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