(1/3)伊勢うどんをマフラーに/吉岡ペペロ
 
うとしたらマフラーが宙に吹き飛んだ。
 ガイドさんが追っかけてくれたがマフラーは海のうえに浮かんでしまった。朝のひかりに海がめらめらと光っていた。あんまりまぶしくてあたしはマフラーを見失った。
 あたしがマフラーに手を突っ込んでアーヤの首やらを触っていたのが悪かったのだ。ガイドさんが、「気になされないでください。この季節は風が凄くつよくて、こんなことがよくあるんですよ」と慰めてくれたが、もっと早く言って欲しかった。
 アーヤが落ち着かなくなった。ちいさな手を首にさ迷わせている。マフラーが消えたからだろう。アーヤにはマフラーがもう戻って来ないことが分からない。またすぐパッと現れるような心持ちな
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