(1/3)伊勢うどんをマフラーに/吉岡ペペロ
 
るものはすべて、とつぜんパッとあらわれてはパッと消えていく魔法にかかったような世界なのだと、家に来てくれた専門家のひとが言っていた。目が見えていたら教えなくても分かることが、耳が聞こえていたら教えなくても分かることが、アーヤには分からない。アーヤがすこしむずがった。ハロー、ハロー、心でそう唱えながら、あたしはアーヤの頬やらマフラーに手をいれて首のうしろやらを触った。たまにぐずるぐらいでほんとうにいい子にしてくれている。バスは二見浦輿玉神社に到着した。

 夫婦岩までいく道すがらとつぜん風が凄まじくなった。抱きかかえたアーヤが飛ばされそうだ。
 アーヤのマフラーがゆるんでいた。結わえなおそうと
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