ちぎり/あおい満月
 
か懐かしい
血の匂いを感じた。
その男と、
行きつけのバーに入った。
俺の肩には、
生まれつきなのか、
三日月が疾走したような傷が、
右肩にあるのだ。
何杯かの酒に酔った俺は、
ある男にその話をした。
すると偶然にも男は自分の肩を
俺に見せた。左肩だった。
その時俺の脳裏には、
ある街角の記憶が、
漣になって思い出された。


***

二人の侍が、
ある古びた街角に立っていた。
二人にはいずれはどちらかが
死ぬ運命にあった。
二人は互いに孤独だった。
けれど二人の間には、
ぬかりない愛のような
強い友情があった。
だから二人は来世への約束とし
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