スイッチ/ただのみきや
て往く 脚を引きずる亡霊たちおまえたちは誰だ
古いレコードの針が跳ねて愛と平和の歌詞が繰り返される
人道的実験が始まる
突き付けられた暁の火の手に狂う兵士の胸を裂いて
殺した相手の魂を移植する
千切れ 飛んだ 記憶 這い まわり
文字を纏えぬ モノ たち
情報の瓦礫を照らす月光のイミテーションあおく
放射冷却された黒焦げの欲望がハミングしている
一匹の蜘蛛が下りて 祈りの手に包まれ 受胎する
幻の街のどこかで水盤に顔を付けたまま反り返った男の影が
静かに時を刻んでいる
無暗に代弁するな
虹色の舌を埋葬せよ
死姦に過ぎないそれは――
石膏像の手にひびが
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