スイッチ/ただのみきや
びが入る 劣情のイロハが湿った息を漏らす
スイッチは壊れていた初めから秘められた偽真珠がとろけて
啜られるために綴り織られた八重一重の倒錯の甘み
のびやかな思考を腐らせる毒薬 夢の乳歯が散乱する庭
振り上げた拳は萎えて背骨は曲がり降り積む抒情に埋もれて往く
歴史の誤用の鍋を囲み音節にバラした死肉や苦い肝を入れて
宴会の末席に加わるか
案山子と空砲でカモメを笑わせるのか
空箱の中の宇宙と炎の包み紙をおまえは信じるのか
寝ても覚めても腕や脚を括られながら詩人だと嘯いてみる
泣いていた理性の蛇足が占うように唾を吐く逃れられない
虚構の座標で花のようにそよぐ風も無くスイッチが入る
スイッチだ日常の点けて弄ぶ消しても眠らない
《スイッチ:2015年12月12日》
戻る 編 削 Point(15)