光線の名残/ホロウ・シカエルボク
 

焦点のずれた目玉は明後日の方を見ている
すべては口を濯いだ水と一緒にパイプの向こうへ


布団の中で本を読んでいた
二十年前のミステリ
買って一度読んで
面白いと思ったけれど
それきり読んでいなかった
内容なんかすっかり忘れていた
失くした記憶を取り戻す
そんな苦労をしている気になる時間


眠ろうとして、いつも二時間くらい
じっと天井を見つめてばかりいる
眠ろうという気持ちは
眠るという動作とリンクしない
キャッチしきれないラジオの電波みたいに
途切れた部分のノイズばかりが宙に浮いている


アラームに揺り起こされる短い眠りの中で
話のネタになる
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