光線の名残/ホロウ・シカエルボク
 








汚れた床に落ちた埃は
身元不明の死体に似ている
掃除機をかけて横たわると
失われた影だけが見える


固定電話が久しぶりに目を覚ます
でも答える前にベルは鳴り止んで
伸ばしかけた手は行く先を失う
もしもし、もしもし、唇の先で
発せなかった声の残響が蠢く


明かりを消した廊下は
行止りに続く路地のようだ
歩く人間が極端に限定されていて
迷い込んだ暗闇が漂ってばかりいる
再度明かりをつけたところで
そいつは見えなくなるだけで…


洗面台の鏡に映る顔は
こちらと目を合わさないようにしていた
歯ブラシをゴシゴシやりながら

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