季節/鷲田
支配するには想像力が欠けていた
世界はあまりにも巨大な自然物だった
人間が世界を支配するなど妄想にすぎない
意味に支配力など初めからないのだ
だから季節は気温で、湿気で、日照時間で、私達に話しかける
そこに比喩は無く、暗喩もなく、関係性もない
私達はレトリックの気化に安堵する
季節に狂気があり、想像力があったら
私達は美学の基に反抗していたのだから
−美学は命など知らない−
それは一つの幸運だった
意味の喪失は
そして、私達は季節に染まってきた
長ネギを食べ
すみれを鑑賞し
花火を打ち上げ
運動会で走り
それは一つの偶然だった
修辞の忘却は
そして
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