すべての夜は悲しみの膝元にあり/ホロウ・シカエルボク
 
には整備士の友達の墓に行った
彼の墓石はタイヤを模して造られていた
身寄りのなかった彼のために
同僚たちが金を出し合ってそこに納めたものだ
その形を見るたびに俺はぞっとする
友達は決してそれを喜んでいないだろうなと思って
「気にするなよ」と声をかけた
彼がいつかポニーテールのすらっとした娘に
にべもなく振られたときにそうしたみたいに


俺はどういうわけかいまだに生きていて無駄ボールの詰まったプールで浮いたり沈んだり
寝床で天井を見上げては聞いたこともない曲のことを思い
墓参りに持参した花のことを思い
そしてのっぺりとした日常のことを思う
なにもないことに嘘をつくみた
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