すべての夜は悲しみの膝元にあり/ホロウ・シカエルボク
 
よろよろと
安アパートが立ち並ぶ通りへと帰っていく売春婦は俺の知り合いだった
あの日も声をかけたかったけれど持ち合わせがなかったのさ
アニーと名乗っていた
本名だって言ってたけど誰も信じなかった
そういう女は嘘をつくもんだってみんな思ってたから


車の下に潜って作業をしてると何故だか
食いもののことばかり考えるって整備士の友達は言ってた
部品とオイルとボルトに囲まれていると
たぶん生きものであることを忘れないようにそうなるんだって
車が大好きでその仕事に就いたのに
どうしてこんなことになっちまったんだろうなって


大橋の下を潜る堤防を歩いていると
ある橋げたの
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