秋、帰る/もっぷ
ている。
秋は、この日風となって町を歩いていた。いよいよ困り詰めて、少し頭を冷やそうかと荒川の土手にやってきた。
自分は少女の大切なひとの死神の役を神さまからいただいている、というのが真相なのである。しかし、すっかり憔悴しきっている、彼に唯一の女性にとってのかけがえのない命を、と思えば、意気消沈するのも当然だろう。
おまけに神との約束を果たすために許された時間は情け容赦なく過ぎ去ってゆく。
「つまり、はっきりとさせなくては」
秋は思った。
自分は一人の少女の平凡なつつましい幸せを奪って神さまに届けるお遣いである、ということである。いつでも、いくど仰せつかっても嫌な役割であ
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