秋、帰る/もっぷ
に君、わたしの前に?」
少女が、思いきって尋ねてみれば、
「くすくすくす…」
親しみを持った、けれど姿の見えない気配だけで応える。
実は少女は、この秋は嫌いだった。なぜならクリスマスは迎えられない命を生きている大切なひとがいたからである。「二人」にとって、この秋は、宣告で始まり、一つのおしまいによって閉じられるということが神の采配で決まっていた。
少女の涙はとうに枯れ果てていた。
嫌いといいつつも淋しさゆえか、秋とは、いつの間にか双方の気が向くとお茶会を開くような仲となっていた。
秋の大好物は甘い、甘いミルクティーである。ちょっと女性的な? それともお酒はのめ
[次のページ]
戻る 編 削 Point(3)