看取り(3/3)/吉岡ペペロ
 
とをしている自分を発見する。なんの脈絡もなくふと、妻もこんなふうにして誰かに看取られて逝くのだろうかと想像した。
妻の裏切りをぼくは裏切りとは思っていなかった。妻が裏切ったというなら、ぼくだって祖国の家族を裏切ったことになる。でも息子はちがうだろう。息子はママがいないことでぼくを責めたことがないような気がする。だから息子は妻を責めているのではないか。息子がもしぼくも妻も責めていないのだとしたら、彼はどれだけ苦しいだろう。
息子の寝顔が浮かんだ。胸に鈍痛が走りぼくは思考をとめた。
この痛みは祖国のことに違いないと思ったからだ。ぼくは日本で息子と暮らすことしかもう考えていない。考えていないという
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