看取り(2/3)/吉岡ペペロ
考えていた。
バスの座席は小さすぎて低すぎて、ぼくはいつも立っていた。息子は座って目を閉じている。
ぼくは彼を見つめてため息を吐いている。
ぼくは選択を間違った。看取りなんてするんじゃなかった。次の停留所のアナウンスが聞こえて停まりますのランプが点灯した。
車窓にあたまをつけている息子の肩を揺らす。静かに思い出すような目をして息子が目を覚ます。ぼくはその顔に微笑みかけた。息子もしばらくのあいだ不安から、解放されているのだろうか。
息子は仮眠室で眠っている。今夜は杉下さんのいる107号室がぼくの居場所だ。居場所なんて言い方はおかしいのかも知れない。
ぼくの母国語は母国でも少数しか使わ
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