看取り(2/3)/吉岡ペペロ
 
眠りから覚めてしばらくのあいだ、ぼくは不安なことのない世界にいられた。息子と公園で遊んでからぼくは家で仮眠をとった。
夕方のひかりがベランダから射している。掛け布団のおもてがすこしひんやりしている。
きょうは死なないで、ぼくはそう思ってもう不安のない世界が終わってしまったのに気づいた。
ピンク色に黄ばんだ夕方の道を息子と歩いてバス停に向かう。
夕方の道を看取りのために歩くようになってから、ぼくはその道中ずっと願わずにはおれなかった。看取りという仕事には、喜びというものがまったくなかった。
きょうは死なないで、誰も死なないで、話しかけてくる息子に勘で受け答えしながらぼくはそのことばかり考え
[次のページ]
戻る   Point(2)