看取り(1/3)/吉岡ペペロ
ここに入居されている方の、最期を看取るのよ」
「最期?」
「そう、夜中に亡くなるかも知れない方の、看取りをして貰いたいの」
ぼくの母国語でミトリは最期という意味ではなかった。
食堂には昼餉の香りと湿ったあたたかさが半透明になって漂っていた。リーダーがその仕事の意義を喋っている。顔が熱くなってぼくはその日本語の意味することを理解している自分を知った。
太陽がしずかだ。浅い深呼吸をすると口のなかの紅茶の匂いがそとに広がった。この施設にたゆとう加齢臭よりも若いぼくの匂いだと思った。
息子が帰り支度をするのを見つめながら先生からきょうの息子の様子を聞いていた。お礼を言って先生にぼくは微笑み
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