爪/はるな
 
父と手をつないであるいたり(だってもとのすがたじゃ爪が刺さっちゃうもんね、ていうか大きさだってずいぶんちぐはぐだし)同じソファにすわったり、同じベッドにだって眠れるようになったから。そういう話は全部父から聞いた、だってあたしが言葉を理解できるようになったときにはママはとっくにいなくなってたから。ママのお墓はない、ママはもとのすがたでもとの場所(つまりあの森のなか)に戻っていった、あたしはわかる、もとのすがたで悼まれるなんて絶対にいやだったママの気持ち。あたしも、ママほどじゃないにしても自分の髪の毛とか爪がひとより早くのびるのが気になるし、まつ毛も眉毛ももっと薄茶色みたいだったらいいのにと思うときも
[次のページ]
戻る   Point(2)