必要なものを必要なだけ/ホロウ・シカエルボク
 
当然のことさ
舞台の周辺で他人の演目をあれこれ言ったところで
それがそいつの力量を示す目盛りになんかなることはない
舞台に立って声を上げることさ、それ以外に
なにかを伝達する方法など無いことを知ることだ
仮面をかぶり過ぎれば本物の皮膚が荒れて腐るだけだ
右手が頬から離れないのはできものを隠しているからなんじゃないのかい


朝のうちに長いあいだ降り続いた雨が午後からの太陽に照らされて
硬質な街角は水滴に彩られている
大道芸人が柔らかな動きでなにかを表現しているけど
オフィス街に近いそのあたりじゃ誰にも見向きもされない
でも彼はどこか遠くの国で拍手喝采を貰ったことがある

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