いくらか体重を軽くして渡す/末下りょう
 

起きたり寝たりはしない。倒立させたテレビがある。ダサい。消されたそれを眺めている。

ある日暮れに、茜色に、肌寒い風になびくカーテンの献身とペーソスに、男は可及的速やかにしらけ、すべての窓をあらゆるもので塞ぎ、部屋をタイトに密閉させた。部屋の鏡を全部取り外して物置きに仕舞った。首輪を外して猫を締めだした。

やがて不穏に溶けだす静けさが触媒となり空虚よりもはるかに重い空虚を部屋に繁殖させた。男はそれを養分としてかたちだけのディレイを培養する。実験する。消費する。


鉄の灰皿に並んで収まる双子の小人の焼死体みたいなマッチ紙を男は眺める。レア物のマッチブック。それと机の上には破いた
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