旅立ち/葉leaf
 



私はホームに立っている。線路越しに街道を行く人々が見える。私はこの一年半ですっかり表情が変わったことだろう。顔の造作というよりは、顔の語り出す意味が変わった。
就職してから、次から次へと新しい窓が開いていった。一つ一つの窓の中にはさらに複数の窓があり、窓の構造は社会の迷宮そのものだった。新しい技術や態度を学ぶこともあった。不条理な思いをすることもあった。トラブルに巻き込まれることもあった。新しいやりがいを見出すこともあった。それぞれの窓にはそれぞれの経験がふんだんに用意されているのだった。
秋も深まり、スーツを羽織りネクタイを着ける寒さになった。このスーツ姿は象徴的に思われた。何よ
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